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「おい」
市ノ瀬くんが、奈月をかばって前に立つ。
「テメーらか、この公園を荒らしまくってんの」
彼はほうきをつかんだ手を、前に突き出した。
「お前らのせいで、俺たちがどれだけメーワクしてんのか、分かってんのかよ」
「はぁ?」
三人の男子が、市ノ瀬くんを囲んだ。
止めに入ろうとした私をぐっと押しのけて、上川先輩が彼の横に立つ。
「生徒会総務、三年の上川だ、お前ら何年だ?」
ほっそりとした市ノ瀬くんに比べて、背も高く、肩幅も、その胸の筋肉も、隆々とした先輩が現れたら、彼らは急に大人しくなった。二人の後ろには、私と奈月、菊池さんもいる。
「用がないなら、さっさと帰れ」
その一言で、彼らは悪態をつきながらもあっさり退散していった。
私はほっと胸をなで下ろす。
「ちょっと、こ、怖かった」
奈月が市ノ瀬くんの袖をつかんだ。
「おう、大丈夫か?」
「今度から、女子だけってのは、やめた方がいいかもな」
上川先輩が言った。
「爽介に言っとくよ」
「えー! じゃあ、当番の回りがまた狂うじゃないっすか!」
「仕方ないだろ、お前がちゃんとやんないからだ」
「やってますって!」
「いっそ俺らがスカートはいて掃除すっか」
「ある意味斬新ですよね」
「逆に誰も寄りつかなくなるだろ」
「普通にモテたらどうします?」
「やってみるか」
「いいっすね」
上川先輩と市ノ瀬くんが笑った。
よかった、こういう時、笑って済ませてくれる人たちがいるって、本当に心強い。
一緒にいたのが、市ノ瀬くんと上川先輩で、よかった。
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