#6『掃除当番』

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「おい」  市ノ瀬くんが、奈月をかばって前に立つ。 「テメーらか、この公園を荒らしまくってんの」  彼はほうきをつかんだ手を、前に突き出した。 「お前らのせいで、俺たちがどれだけメーワクしてんのか、分かってんのかよ」 「はぁ?」  三人の男子が、市ノ瀬くんを囲んだ。  止めに入ろうとした私をぐっと押しのけて、上川先輩が彼の横に立つ。 「生徒会総務、三年の上川だ、お前ら何年だ?」  ほっそりとした市ノ瀬くんに比べて、背も高く、肩幅も、その胸の筋肉も、隆々とした先輩が現れたら、彼らは急に大人しくなった。二人の後ろには、私と奈月、菊池さんもいる。 「用がないなら、さっさと帰れ」  その一言で、彼らは悪態をつきながらもあっさり退散していった。  私はほっと胸をなで下ろす。 「ちょっと、こ、怖かった」  奈月が市ノ瀬くんの袖をつかんだ。 「おう、大丈夫か?」 「今度から、女子だけってのは、やめた方がいいかもな」  上川先輩が言った。 「爽介に言っとくよ」 「えー! じゃあ、当番の回りがまた狂うじゃないっすか!」 「仕方ないだろ、お前がちゃんとやんないからだ」 「やってますって!」 「いっそ俺らがスカートはいて掃除すっか」 「ある意味斬新ですよね」 「逆に誰も寄りつかなくなるだろ」 「普通にモテたらどうします?」 「やってみるか」 「いいっすね」  上川先輩と市ノ瀬くんが笑った。 よかった、こういう時、笑って済ませてくれる人たちがいるって、本当に心強い。 一緒にいたのが、市ノ瀬くんと上川先輩で、よかった。
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