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学校へ向かう帰り道、市ノ瀬くんが私の隣に並んだ。
「小山は、大丈夫だった?」
小さな声で、ぼそりとつぶやく。
それは、今さっきのことを言っているのか、それとも、今まで一人で(実際には他のメンバーもいたけど)公園掃除を任せてきて、問題はなかったのかということを聞いているのかな?
彼の真意は分からなかったけど、今日だけは、彼のことを許してあげられる。
「うん、大丈夫だったよ、ありがと」
彼は小さくうなずいて、そのまま黙って歩いてたけど、そうだ、私も一言、彼に言っておかなければならないことを思い出した。
「今度から、ちゃんと一緒に行こうね」
「あぁ、分かった」
素直にそういう返事が返ってきたのが、ちょっと意外だった。
またなんかぶつぶつ文句を言って、掃除に来ない言い分けを並べるのかと思った。
なんだ、ちゃんとしようっていう気持ちは、彼なりに持ってるんだな、初めて知った。
サッカー部のグラウンドの前で、私たちはほうきとゴミ袋を受け取って、二人と別れた。市ノ瀬くんと上川先輩は、私たちに手を振ってくれて、フェンスの奥へと走っていく。
「さっきの隼人、ちょっとかっこよかったよね」
梨愛がそう言ったら、奈月は黙ってうなずいた。
私の視線は、グラウンドに走り出た二人の背中を追っている。
ここからは、隣にいる女の子二人の表情は見えないけれども、きっとこの二人も同じ目で、あの人たちの背中を見てるんだろうなって、そんな気がした。
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