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「誰か探してた? もしかして俺?」
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
だけど、誰を探してたのかは自分でも不明だし、特に何かの目的があったとかいうわけでもなく、本当にただ見てただけだった。
「違います」
「じゃ、なんで見てたんだよ」
「あぁサッカーやってるなーと思って」
「なにそれ」
彼の視線は、私の右手にあるほうきに集中している。
「俺、今日も掃除には行けないから」
「大丈夫、期待してないし」
「俺いま、2年のレギュラー選考のためのトライアル中で、練習とかも忙しくて、それが終われば、生徒会の方もちょっとは手伝えると思うんだけど」
私は彼を見上げる。だから、なに? という感想以外は、ない。
「いいよ別に。じゃあ私、行ってくるね」
他になにか言えればよかったのかな、上手い言葉が見つからないから、私は急いで彼に背を向けた。
そのまま、早足で校庭を抜け出す。彼からの反応は、特に何もない。
やっぱり、あんなところで立ち止まるんじゃなかったな、市ノ瀬くんにあんなことを言われたのも、なんとなくシャクにさわる。
そうでなくても、公園掃除なんてめんどくさいだけなのに。
私はうんざりした気持ちで、そこへ向かった。
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