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#1『生徒会総務』
だから嫌だったんだ、こんな役割。
放課後の教室、私はチャイムと同時に姿を消した相手を探していた。
「ねぇ、市ノ瀬くん、どこに行ったのか知らない?」
私は、すぐ隣にいた男子に声をかけた。
「えー? 部活じゃないの?」
あぁ、そうか、そうだろうね、教室の窓からグラウンドをのぞくと、今まさに校舎を飛び出し、サッカー部の仲間のところへ駆け寄る彼の背中が見えた。
「今日は委員会があるから、部活は行かないでって言ったのに」
私はため息をついて、窓から校庭を見下ろす。いつもこれだ、一緒に協力してやっていこうっていう気持ちが、あの人には全くない。
4月の始め、じゃんけんとくじ引きで、運を外しまくった私は、同じように外しまくった彼と、生徒会総務という、一番めんどくさい委員会に所属することになってしまった。
うちの学校では、各クラスから男女2名が選出され、その選ばれし不幸な生け贄が、生徒会活動に従事することになっている。
今日はその委員会の3回目定例会、毎週毎週、週に1回も集まって、ひたすら雑用をこなす委員会に、彼はもう興味を失ったらしい。
ちゃんと来てねって、今日はあれほどお願いしておいたのに……。
何度言っても変わらない彼に、私はあきらめて生徒会室に向かった。結局誰かがこうやってそこに行かないと、体育祭とか文化祭とか、派手な行事の時に困るのはクラスのみんななのに、どうして私が犠牲になってるんだろう。
私はただ、じゃんけんで負けただけなのにな。
部屋に入ると、もう委員会開始時刻がきているというのに、集まっていたのは役員の半分にも満たなかった。なんだかんだで、いつもこういう参加率になってしまうんだよね、この生徒会って、真面目に来てる私がバカみたい。
「じゃあ、始めよっか」
生徒会長、3年の立木先輩が、閑散とした中で立ち上がった。
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