第1章

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 また舌打ちの音が聞こえた。目標を見失ってしまった白髪の男の子は私のことを睨みつけてきた。私も負けじと視線をそらさず睨み返した。  しばらくして白髪の男の子は付き合ってられないとばかりに視線を外し、ポケットからスマホを取り出した。電話をかけているようだった。 「もしもし、終わった。ダメだった・・・・・・え?いやガキのほうだ。もう完全にイっちゃってて質問に答えられなかった・・・・・・今、住所送るから拾いに来て」  ポケットにスマホをしまうと男の子は何も言わずに来た道を引き返していった。一度だけ私を見た。その視線は馬鹿なヤツと言っているようだった。 私はありがとうと言うべきかどうか迷っているうちに彼の姿を見失った。  しばらくすると直さんが猛スピードで迎えに来てくれた。かなり動揺して心配していたが私が無事なことを確認すると警察に連絡した。一通りの事情聴取をされたが、時間も時間だったので手早く終わらせてもらった。男の子と争った白髪の男の子については隠した。通りすがりの人に助けてもらったとしか伝えず、身体的特徴は伝えなかった。  家に帰ってきたのは夜の12時近くだった。何故か家の玄関と居間に明かりがついていた。 「直さん、家、明かりついてるよ」  さっき襲われた時の不気味さがぶり返してきた。 「ん?ああ、大丈夫だよ。多分アルドが先に帰ってきたんだよ」  アルドって誰と聞く前に直さんは引き戸を開けた。  居間に行くと電気をつけっぱなしで外国人の男の子がソファで寝ていた。その子の髪の毛は真っ白だった。さっき私のことを助けてくれた外国人の男の子だった。 「ど、どうしてここにいるの?」  思ったより大きな声が出てしまった。その声で男の子は起き上がった。 「ごめん、雫、突然だけど、今日からここに一緒に住むアルドだ。仲良くしてやってくれ」 「えーー」 「4月から同じ高校に通うことも決まってるから」 「えーーーー」  予想外のことがよく起こる日だった。  白髪の男の子アルドは鬱陶しそうに私を見た。目は口程に物を言うという、ことわざそのままに、うるさいなぁと非難がましく私を見た。アルドは毛布をかぶりなおして再びソファに寝た。毛布をかけなおす時彼の左腕に大きな切り傷が見えた。  
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