2-1

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 私は目覚ましが鳴る5分前に目が覚めた。いつも目覚ましが鳴る前に起きてしまう。時刻は6時55分だった。昨日、ベッドに入った時間は覚えてないけど、いつもより遅かった。それなのにいつも通りの時間に起きてしまった。癖って困りものだ。  2月末日、この時間帯だと外はまだ薄暗い。窓、カーテン、障子、3つのフィルターを通して部屋に届く太陽光は繊細で起きたばかりの私の目に優しかった。モグラか私は。 「モグラじゃなーーい」  勢いをつけてベッドから起きあがる。部屋は鋭い冷たさに包まれていた。原因は古い建物によくある隙間風だ。暖かいベッドに未練はあったけど、昨日はお風呂に入らずに眠ってしまったから、体から汗のにおいがした。そのにおいに耐えられなかったので一刻も早くシャワーを浴びたかった。タンスから着替えを引っ張り出して、ゆっくりと階段を降りる。中二階から物音は聞こえず、直さんが起きている気配はなかった。  お風呂場に行くには居間を通る必要がある。昨夜、居間のソファで寝ていたはずの白髪の男の子アルドの姿はなかった。ついでに布団も無くなっていた。でも、暖房はつけっぱなしだった。一緒に下宿するって言ってたけど、いったいどこで寝泊まりするんだろう。このまま居間に住むってことは考えづらいし、まさか隣の部屋? いやあそこは物置だって直さんが言っていた。考えを巡らせながら、早足でお風呂場へ向かう。  暖かい居間を通り抜けたとき、自分の部屋の暖房を入れてこなかったことを後悔した。そんなことを考えながらお風呂場に到着した。私は脱衣所の引き戸に手をかけ扉を開けようとした。すると私が扉を引く前に勝手に扉が開いた。目の前に例の男の子アルドが上半身裸で立っていた。 「きゃーーーー」  私は扉を閉じようとした。でも、アルドが扉を手で押さえていて、閉めさせてくれない。しばらく脱衣所の前で無言の攻防があった後、やっと言葉が出た  「ふ、服を着てよ」  アルドは急に力を抜いたので勢いよく引き戸が閉まった。木と木がぶつかる乾いた音がした。
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