ケイルとリモネード

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ねえ、そろそろわかってきた頃かしら? この場所のことが? それはあなたに聞かなくてはわからないものよ。この場所のことなんかあなたしか知らないものなんだから。 この二人で話している中ではそうかもね。でもここで毎日働いている私でだってこの場所について知っていることなんて本当にごく一部だけ。 毎日働いているのに? ええ。それにそのごく一部のことだってちゃんとした真実なのか実際と合っていることなのかわからないものなんだから。 あなたは疑っているのね。自分の認識していることを。まあそうなるのでしょうね。こんな場所なものだから、この場所のあれこれに関することのほぼ全てはきっと人に聞かされたことや渡された本を読んで知ったことによるものなんでしょうからね。 そうに決まっているわ。 こんな真っ暗で何も見ることができないような所ではね。でもそんなところであなたは毎日何を働くことがあるのかしら? なにかしらがあればそこには働く用があるということよ。 ではここにはなにかがあるということね。目には見えないものの、ずいぶんと賑やかな風景が広がっていたりする? 目に見えず感じることもできなければそれは賑やかというかしら?もしくは実際に賑やかといった感じでたくさんのものたち、そうねそれらは恐ろしく巨大なものとして、そういうのがここに所狭しとカオス的に並び蠢いていたところでまたちゃんと言葉を発する口をみんなして持っていたところで、みんながみんな押し黙って目なんか閉じていたものなら、それはさてどうなのかしら? 賑やかとは言えないわね。ここはそういう感じ? いいえ、私たちの目の前にはなにも無い。巨大な空洞が広がっているの。 聞いた話によれば? ええ。
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