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 歌い終えたハルが、ステージ袖に戻ってきた。ハルを迎える輪に、静也君は入らない。ほとんど放心しているように見えた。 「静也? 静也はどこ?」  自分を囲む輪に静也君がいないことに気づいたハルが、薄闇に腕を伸ばす。それでも動けずにいる静也君を探して歩み寄り、そっと身体を預けるハル。  美しい光景。あの様子だと、想いは受け止められたらしい。  ふと横を見ると、翔一郎さんも寄り添う二人を見ていた。目を細めて、どこかせつなげな表情で。抱きしめたくなってしまうから、目をそらす。  もしかすると、翔一郎さんにはもうすでに、心に想う相手がいるんだろうか。そう思って、少し怖くなる。俺がずっと、悪い虫はつかないようにしてたのに。 「お疲れ、隆宣。さあ、今日は飲もうな」  ハルを囲んでみんなで楽屋に戻ろうとする中で、翔一郎さんがぽんぽんと俺の肩をたたき、笑う。  ツアーは終わってしまった。ステージで翔一郎さんのギターの音を浴びながら、背中を見守る幸せな時間も、もう終わり。俺はステージセットを振り返りながら、楽屋に戻った。
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