プロット

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 注文した紅茶を一口飲んだ一樹は、しばし迷ったようだったが、口を開いた。七歳の時 あの男に母親を殺された。目的は分からない。小学校から帰った一樹が目撃したのは、床に倒れ伏した母とその横で狂ったように笑う男だった。男は一樹を見ると、ふっと姿を消した。それから三年後、十歳の時に一樹は母を殺した男はドールだったと知った。それから極度のドール嫌いになり、ドールのともドールの血が入った人間とも接しなくなった。同時期に超能力に目覚め、これを機に復讐を果たすことを決意した。しかし、一人では男の影も形も掴めなかった。二年後、十二歳の時、組合の存在を知り、「ユニオン」に加入した。一樹ほどではないものの、同じくドールに反発心を抱くメンバーは一樹に快く協力してくれたが、それでもなかなか所在は掴めなかった。代わりに、未来予知の超能力を持つ存在がいる、という情報を得る。それがローディアだった。しかし、彼女は人間もドールも入り混じった中立派の「ゲヴェルクシャフト」に保護されており、彼女にもドールの血が入っていた。そのことで一樹はかなりしぶったが、仲間たちの後押しを経てローディアに会うことを決意。常に親ドール派との諍いの仲裁をしてくれる「ゲヴェルクシャフト」のリーダー、アレグロに事情を話すと彼は一樹をローディアに会わせてくれた。その時にはもうローディアは寝たきり状態で、それからずっと彼女の断片的な余地を頼りに犯人を追っていた。何度か犯人と遭遇したものの、おそらく瞬間移動の超能力を持つ犯人を捕えることができなかった。そんな時、翔斗が話かけてきた。   そう締めくくった彼女は、どこか憑き物が落ちたような表情をしていた。翔斗は黙って一樹 の話を聞いていたが、すべて話し終えると困ったようにため息をつき、少しだけ笑った。なん で俺の親父はそんなことしたんだろうな。一樹は、あんまり無理するもんじゃないわよ、とそ んな翔斗をすっぱり切り捨てた。自身の父親の仕出かした事を聞かされ、正直翔斗は困惑していた。碌に顔も合わせてないどころか自分に暴力を振るっていたし、勝手に行方不明になった。しかし、それでも一応父親だった。複雑な気持ちを抱えたまま、翔斗は時間をくれ、とだけ言った。一樹は静かに頷いた。
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