プロット

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 一方翔斗は家で一人考え込んでいた。母親はいつも元気な翔斗が静かなことに心配しているようだったが、何も言わなかった。一人ベッドに胡坐をかいて、目を閉じる。彼はどんな父親だったか。酔っぱらってても酔っぱらっていなくても翔斗や母に暴力を振るっていた。滅多に帰ってこなくて、一緒に遊んだ記憶もない。どう考えても、いい父親ではなかった。では、死んでもいい相手か。七年ぶりに父の顔を見たときは思わず動揺したものの、ゆっくり考えれば特に今までと変わらないのだから、問題はないだろう。そこまで考えて、翔斗は目を開く。一樹はどうか。彼女とは今まで何の接点もなかったし、今も大した接点ではない。翔斗が一樹にまとわりついていただけだ。しかし、妙に親近感を感じる。生粋の人間である一樹と、半分以上ドールの翔斗。どこにも親近感を感じる要素はないのに、なんとなく近いような気がする。翔斗は昔からかこういった野生の感が優れていた。よって、翔斗は自分の勘を信じることにした。今更、父親などいてもいなくても変わらない。それなら、復讐に燃える一樹を止める理由などないし、どこか心の底で、自分の勘はそうすべきだと告げている。明日、もう一度一樹に協力する旨を伝えようと決めた翔斗は、心のつっかえが取れるのを感じた。いつも通りに戻った彼は、明日に備えるべくベッドへ潜り込んだ。
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