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うとうととしながらも、まもなく日付が変わろうとする頃、夜の静寂に割り込む音がリッピーの長い耳に飛び込んできた。
何かが割れる音と誰かの声。
窓から顔を出して音の方へ視線を向ける、静まりかえった夜の町、誰も動くものなど居なかった。
気のせいかと思い視線を外そうとした時、夜の町に小さな光が音と共に差し込まれる。
バキンッ!!と乾いた音が鳴る、リッピーの家から少し離れたカワウソのケメンの家の窓が破れ、中の光が外に漏れていた。
何があったのかリッピーが身をのりだした時、割れた窓から何かが飛び出し、道を挟んだ向かいの家にドンッ!!と大きな音を立てぶつかった。
それがなんなのか一瞬解らなかったが、大きさと毛並みと、家の中から聞こえた『あなたぁっ!!』と言う叫び声でそれがケメンの父だと解った。
驚き声も出ない、そして事態は止まらない。
パキパキと音を立て、割れた窓が更に開かれていく。
それは初めて見る動物の形をしていた、両腕は異常に膨らみ極端に足が細い、形だけではなくその皮膚は継ぎ接ぎだらけのボロボロの生地でできていて、長く美しい曲線をもった爪と同じ、全身が真っ黒な何かだった。
それは意識の無いケメンの父に近づこうとする、だが深夜の物音を聞き付けた向かいの住人が表に飛び出してくる。
「な、なんだテメェっ!!」
この国で一番の力自慢である、ブルドックのカーブがそれを止めた、だがその怪物はカーブを一瞥すると爪を振るう。
木こりとしての腕力を振るうことも、悲鳴を上げる間もなく、カーブの首は宙を舞い切り口から大量の綿が飛び出す。
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