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プロローグ
天空にて白光する太陽が徐々に赤く染まり、夕暮れが街を包み込む。
ぬいぐるみ達は忙しく動く、夕食の準備や仕事を終え帰宅する者、親に怒られるまで遊ぶ子供達。
その夕暮れ独特の喧騒の中、頭からローブを被った者と一匹の仔熊が街から離れていったが、誰もそれに気づいていない。
街と農場を越えた頃、仔熊は眠そうな目を擦りながら問いかける。
「ねぇ、どこまで行くの?僕眠いんだ」
その者は仔熊の手を優しく撫でながら。
「もう少しだよ」
と言い優しく頬笑む。
「そうだ、これをお食べ」
ローブの中から大きな飴玉を取り出し、仔熊に与える。
仔熊は飴を口いっぱいに頬張り黙ってついていく。
天空の太陽は完全に赤く染まり、その姿を小さく変化させつつある。
風が冷たく強くなっていた。
冷たさは夜が近いことの現れ、そして強さはこの国の内縁部から流れ込んでいた。
螺旋構造の中心に最も近いこの場所は、人気が完全に無くなったこの世界の淵。
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