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02 奪還者
夜が死に、朝が生まれる。
星空が徐々に消えていくと、天空の太陽は徐々に大きくなっていく。
悲鳴と怒号、一方的な暴力が支配した悪夢の様な夜が明けた。
天空の太陽がその白さを徐々に取り戻していくと、その惨状が明るみになっていった。
家が破壊された者、家族を失った者、自身の一部を欠損した者。
暴力などこの国には無かった、多少のいざこざはあったが『殴る』という行為など、誰も考えた事など無かった。
ぬいぐるみは戦う事など出来はしないので、当然だった。
だが昨夜の襲撃者は明らかに同じぬいぐるみだった。
黒一色に染められ、継ぎ接ぎだらけの体と言う差異はあったが、ぬいぐるみである事は間違いなかった。
それが襲いかかり、ましてや同朋を喰うなど。
まさに悪夢でしか無かった。
生き残った者達は王城へと集まる。
自然と大広間に集まり、寒いわけでは無いが身を寄せ合い震えている。
破られた扉の隙間から、王に仕える者たちが出てくる。
その者達に囲まれ、覚束無い足取りで入ってきたのは、犬の王ケルン。
『白銀の流星』と称えられる程、その白く長い毛並みは常に輝きを放っていた。
だが今その輝きは泥と埃にまみれ失われている。
普段から長い毛が顔を隠してはいたが、顔は見えなくても物静かで優しい性格の指導者である事は、国民の全員が知っていた。
だが今は俯き憔悴し、全くと言っていい程覇気が無かった。
その変容は国民を同様させた。
王がここまで落胆した姿など誰も見たことが無く、ましてや何があっても、今回の件でも解決策を提示してくれるものと国民は期待していたが、その期待は裏切られそして王の言葉に絶望するしか無かった。
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