勇者、現る

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 電車を待つ間、私は暇である。  携帯電話は存在するがネットを見る気分ではない。本もついさっき読み切ってしまった。大学のテストも終わり、夏休みに入ろうとしているので特段勉強する気にもなれない。  ああ、暇だ。  私はこれから電車が来るまでの間の十分間の暇をどうにかして埋めなければならないのだ。暇をつぶせるものと言えばチョコレートぐらいしか持っていないが、駅のホームでむしゃむしゃと板チョコを食べるのはよろしくない。電車さえ来てしまえば、前の駅で電車に乗る友達と会えるので退屈ではなくなるが。  あまりの暇さに死んでしまいそうだ。  はあ。電車が早く来ないだろうか。  そう思っていた時だ。私は見つけてしまった。  栄養剤を持っている男性だった。どうやらサラリーマンらしい。朝からくたびれた顔をしてくたびれたスーツを着ている。そのくたびれたサラリーマンは、ちびちびと栄養剤を口に含んではすぐに蓋を閉め、閉めたかと思えばまた蓋を開けて飲んでいる。  あまりの疲れていそうな見た目に大丈夫なのだろうかと心配になってしまう。     
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