勇者、現る

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 きっとこの男性は家族の為に戦っているのだろう。家に帰っても肩身が狭い。会社に行っても中途半端な管理職で周りの調整役。毎日辟易しているのかもしれない。  毎日のように晩酌したいし、なんなら朝から飲んでいたいぐらいなのかもしれない。しかし、そんなことはきっと許されない。もしかしたら若干アルコールの入った栄養剤を少しずつ飲むことによってお酒を飲んでいる気分になっているのかもしれない。  いや、それではつまらない。  この男性は、昼は会社と戦い、夕方は家族と戦い、夜は異世界で戦っているのだ。  仕事ではそれなりに重要なところを任されているが、上司の尻に敷かれ部下の話を聞いて取り次ぎながら仕事をしている。何かあれば上司から失敗を擦り付けられたり部下の失敗を残業してまでフォローしているのである。  きっと最近は巨大プロジェクトの一端を担っており、上司からは異常なほどの圧力をかけられているに違いない。失敗は絶対に許されないと。しかし、そんなことを言った上司自体がどこかで失敗をしてしまい、何日もかけて修正に修正を加えながら、部下たちがやる気をなくさないようひたすらに気配りをしているのである。 
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