勇者、現る

　家に帰ればよき夫のふりをするために、ニコニコしながら家事を手伝う。きっと奥さんは強い人なのだろう。奥さんにあれこれ指示をされながら動き、奥さんの思うところまで到達しなければあれやこれやと文句を言われる。

　娘や息子は丁度反抗期でお父さんウザいとかクソジジイとか言われているのだろう。そして、奥さんと子どもたちが喧嘩になると仲裁に入ろうとするのである。しかし上手くいかない。あんたがどんくさいのも原因だと罵られることもある。それでも家族の平穏を祈って落ち着けと諭そうとしているのだ。

　くたくたになって、やっと寝床に入って寝れると思うと、次は若い体になって魔王討伐に向かうのである。その時の名前はロラン。綺麗な赤毛をさらさらとなびかせたイケメンに扮した彼は、力自慢でアホな女戦士と、理知的で偉そうにしてくるひょろひょろの男魔法使い、天然で巨乳の女治癒術師と旅をしているのである。

　毎日のように喧嘩をしている戦士と魔法使いをなだめながら、天然ゆえに治癒術師がいろいろ拾ってくる近くの人たちの困りごとを解決する日々を送っているのである。涙あり、バトルあり、友情ありの日々を送っている。しかし、なかなか魔王の居城にたどり着かない状態が続いている状態なのだ。