勇者、現る

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 そんな状態であるから、彼がひとりになれるのはきっとこの駅のホームだけなのだろう。そしてこの場所では酒を飲むことができない。だからやけになってアルコールが微量含まれている栄養剤を飲んでいるのである。  しかし、これは酒ではなくてアルコールを微量に含んだ栄養剤である。だから、これを飲めば少なくとも体力は回復するのだ。仕事にいい影響を与えてくれるに違いない。  そんなことを考えながら、ちびちびお栄養剤を彼は飲んでいるのだ。  ガタンゴトン。ゆっくりと音が鳴る。プシューっと音がして近くの扉が開いた。壮年のサラリーマンは重たそうに腰を上げた。私も電車に乗る。 「おはよ。サエコ」  友達に声をかけられた時、さっきのサラリーマンと電車の中ですれ違う。 「あ、勇者」 「はあ?」  友達が大きな声で笑いだした。  うるせえ。
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