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「……ほしいよ」
頭がぼんやりして
徐々に視界がぼやけてゆく。
「もっと俺を苦しめたいか?」
「え……」
柔らかい声。
温かい舌が僕の指を舐める。
「違うよ……僕……そんなこと考えたこともない」
中指。
薬指。
小指の先。
順番に。
「本当だよ……僕、いつだって何も考えてないんだ」
与えられているのは
愛と呼ぶ以外の何物でもなかった。
「征司お兄様を苦しめたいだなんて……本当にただの一度だって」
「それならおまえは天才だ」
「お兄様……」
「おまえは俺を苦しめる天才だ」
そこには温かい笑顔も
一筋の光もないけれど――。
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