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刺し貫かれるその瞬間は
今でもまだ怖い。
「ああ、クソ……温かい」
痛みが怖いんじゃない。
「征司……」
だからなんとも思っていない相手なら
むしろこんな恐怖心は持たない。
「動く前から吸い付いてくるよ」
「言わないで……」
「おまえ――相当俺が欲しかったんだろ?」
「やだっ……いやっ……」
同化する肉体に流れ込んでくるのが
衝動的で薄汚い欲望だけなら――。
「泣くほど嬉しいか?」
「見ないで……見ないでよ」
どんなに簡単で
どんなに気楽だろうか。
「僕の事なんか見ないで……」
涙がそそるのか。
征司の一部が僕の中でより熱くなって蠢く。
必死で顔を隠そうとする両手を
軽々と抑え込まれていた。
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