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「何だこれ……」
袋を開いて驚いた。
中に入っていたのはたったひとつ。
昨夜は焼き立てだったであろう萎んだメロンパンだった。
紙袋の端に小さく販売車のロゴが入っている。
「そうか……」
ここに来る途中の道で
きっと征司は販売車を見つけたんだ。
自分は甘いものなんて食べないくせに。
車を止めてたったひとつ――。
僕の為に焼き立てを買った。
「似合わないこと……」
そんな買い物したことないから
きっと随分手間取っただろうな。
ブラックカードなんか出して
なんで使えないんだって店主を困らせたかもしれない。
分かんないけど――。
ただひとつだけ
確かなことはある。
昨夜があんな夜になるなんて
征司はこれっぽっちも思ってなかったってこと――。
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