episode243 破壊夜

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ザラザラしたパンの表面を撫でると 一口だけメロンパンを齧った。 あんたは大馬鹿――。 喋らないはずのことりが 僕に向かってはっきりとそう言った。 あの人はあんたのこと ものすごく愛してるのに――。 「……分かったようなこと」 胸が詰まって それ以上食べられなくなる。 僕は夜明けの湖面を見つめた。 藍色の闇の合間に立つ細波が 微かな朝陽を受け宝石を散りばめたようにきらめく。 まるでモネの水彩画みたいに美しかった。 立ち上がり覗き込むと 征司に絞められた――いや絞めさせた首筋が鈍く痛んだ。 僕はいまこそ 飛び込むべきかもしれないと思った。 だけどできなかった。 「飛び込むなら俺のシャツ、脱いでから行けよ?」 いつの間にか背後に征司が立っていて 僕を後ろからすっぽり抱いていたから――。
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