episode243 破壊夜

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ガラスが砕け散る。 もの凄い音がした。 ことりは怯えきったように身を丸め両耳を覆う。 口元だけ丸い形に開いていた。 声が出たならきっと 盛大に悲鳴を上げていたに違いない。 征司は肩で息をしていた。 さえざえと冷えた目で 己の乱心の痕跡をしばらく見つめていた。 が――やがて僕が身を沈めるベッドに 膝を折って腰を下ろすと 「俺がいつ……未来など欲しいと言った……?」 ぽつり洩らした。 「俺は正直、あの家は俺の代で滅んでもいいと思っている」 「え……?」 「無論俺が死んだら、あの家を欲しがる人間は山といるだろうが」 それでも――。 「財産も権利もそんなもの欲しいならみんなくれてやる」 征司の手が 泣き濡れた僕の頬に伸びた。 そして振り絞るように囁く。 「俺が生きているのは今だ――今手にしているものが俺のすべてだ」
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