2.小説家さんと赤い髪の男

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********  レジに立っている店員に頭を下げて店の奥に向かい、そこにある階段を降りると手前の部屋のガラスの向こうで金髪の男がご機嫌な様子でドラムを叩いているのが見える。  音はあまり聞こえない。どういう仕組みなのかは分からないけれど防音室とはそういうものだ。  金髪の男がいる部屋のドアを開けて中に入るとドン、と一回ドラムの音が聞こえて、それとほぼ同時にあぁっ!と驚いたような声が聞こえてくる。 「モガ、戻ってくるの遅いからクロ先輩が探しに行ったんだぞ。スマホ鳴らしたら室内から着信音聞こえてくるしよー」  うん。サクはいつも元気いっぱいだ。 「って何だよ。いつもの読書じゃなくてCD買いに行ってたのか。何買ったんだよ」  矢継ぎ早に、矢継ぎ早であってるかな?そういうふうに放たれる彼の言葉を聞いているとフミさんから渡された袋をとられて中身を出されてしまう。 「へぇ。梱包材なんて巻いてくれるようになったんだ。それで、何を買ったのかなぁ?」 「返して」  一応、そう文句を言ってみるがサクはそれを無視してCDに巻かれたプチプチをほどく。 「はぁ?何で自分のCD買ってんだよ。これならまだ在庫が何枚もあるだろ?」     
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