2.小説家さんと赤い髪の男

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「買ったんじゃない。フミさんに借りたんだ」  思っていた通りのことを言われて言葉を返すと彼は 「フミさん?」  と出した名前に反応する。 「公園で会ったんだ。自分用と人に貸すのに二枚買ったから貸しますって」 「それで、ありがとうっつって自分のCD借りてきたのかよ」 「そうだけど」  公園に持って行っていた能登先生の本とメモ帳のセットを鞄のポケットに仕舞い、ギターを取り出して紐を肩にかけてピックを持つ。 「お前が欲のねぇ奴だってことは分かってるけどさぁ、何でそのグループのボーカル兼ギター俺なんだぜ!キラッて言わないんだよ。えぇっ、本当ですかぁ感激ですぅーってすぐ落とせたかもしれないのに」 「きらっ?」 「それは効果音だ気にするな」 「そう」  サクの言うことは面白いなぁと思っていると 「で、借りたってことは返すんだよな?今日はいつもの場所借りられなくてちょっと遠出してるから、また偶然会うなんてなかなか無いぞ」  と彼は肩をすくめた。 「電話番号交換したから」  ギターを弾く前にいつもやっている手の準備運動をしながらそう返事をするとドン、と体当たりをするように肩に手を回される。     
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