2.小説家さんと赤い髪の男

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「駅!ここと全然違う方向じゃないか」 「そうだね。でも迷子を放っておけないし」 「迷子?」  自分が、じゃなくてか?と言いたげにクロ先輩が言葉を繰り返すとサクがパン、と手を叩く。 「それよりも、聞いてくださいよ!モガがファンをファンであることをいいことに食おうとしてます!」 「それは自分の話か?」 「いやいや、俺は自分のファンには手を出さないって決めてるんで」 「どうだか」 「それで、菜奈村の言っていることは本当なのか?」  せっかくクロ先輩のターゲットが自分から移ったからギターを鳴らしていたのにすぐにそれが自分に戻ってきてしまう。 「俺が走り回っている間にいい出会いでもあったのか?」 「怒ってる?」 「誘拐でもされたんじゃないかって心配したんだぞ」 「ごめんなさい」  言われた俺は素直に謝ったのに、それにかぶるようにサクが 「誘拐って、心配しすぎだろ!」  と言って笑う。 「絶対ないとは言い切れないだろ。それで、どんな子なんだ?」 「早く練習しよう?」  その話はいつだって出来るし。と話を打ち切ろうとするとふたりそろってふぅと息を吐いて 「お前ってホントマイペースだよな」  と言った。
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