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「駅!ここと全然違う方向じゃないか」
「そうだね。でも迷子を放っておけないし」
「迷子?」
自分が、じゃなくてか?と言いたげにクロ先輩が言葉を繰り返すとサクがパン、と手を叩く。
「それよりも、聞いてくださいよ!モガがファンをファンであることをいいことに食おうとしてます!」
「それは自分の話か?」
「いやいや、俺は自分のファンには手を出さないって決めてるんで」
「どうだか」
「それで、菜奈村の言っていることは本当なのか?」
せっかくクロ先輩のターゲットが自分から移ったからギターを鳴らしていたのにすぐにそれが自分に戻ってきてしまう。
「俺が走り回っている間にいい出会いでもあったのか?」
「怒ってる?」
「誘拐でもされたんじゃないかって心配したんだぞ」
「ごめんなさい」
言われた俺は素直に謝ったのに、それにかぶるようにサクが
「誘拐って、心配しすぎだろ!」
と言って笑う。
「絶対ないとは言い切れないだろ。それで、どんな子なんだ?」
「早く練習しよう?」
その話はいつだって出来るし。と話を打ち切ろうとするとふたりそろってふぅと息を吐いて
「お前ってホントマイペースだよな」
と言った。
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