2.小説家さんと赤い髪の男

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「そんなこと言って、父さんに聞かれたら叱られるよ」 『心配しなくても父さんなら自分の寝室でぐっすり寝てる。兄さんが家に居たころは晩酌せずに眠れるか!なんて言って誰よりも遅くまで起きてた日もあったけど、今じゃ爺ちゃんと同じ時間に寝てるよ』 「健康的で、いいんじゃないかな」 『もう少し早くそうして欲しかったけどね』  自業自得としか言いようがないのだけれど夜更かしをした翌日に辛そうな様子であんこを包む父の姿を思い出してそう言うと、弟は容赦無くそう切り捨ててはは、と笑った。 「じゃあ、寝てたのに起こしてごめん。お礼はあとでするから」 『それなら、たまには母さんに電話でもしてあげてよ』  お礼はゲームでも送ればいいかなと思っていたのに思ってもみなかったことを言われて返答に迷っていると 『こっちからは連絡しづらいしさ』  と言葉を重ねられる。 「考えとくよ」 『うん。じゃ、おやすみ。兄さんも早く寝るんだよ』 「分かってるよ。おやすみ」  これで大福づくりはなんとかなりそうだな。餅をつくる算段がついたことに胸をなで下ろしてスマホを机の上に戻して壁にかけたカレンダーに視線を向ける。  弟のことだからすぐに送ってくれるだろうけれど、早くても届くのはあさって以降だろうなぁ。     
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