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まだ20代でこの店を継いだおっさん、もとい橘 慎之介さん。
近所の人には慎さんとか慎ちゃんとか慎君とかって呼ばれてるのをよく聞く。
因みに俺は昔から慎兄ちゃんと呼んでいる。
俺は外階段を下りてシャッターの前で待っていると、しばらくしてシャッターが開いた。
「お待たせ」
「いや。ありがとう」
「まだ直してねぇよ」
朝から申し訳ない、開けてくれてありがとう、という気持ちで礼を言うと、苦笑されてしまった。
慎兄ちゃんは俺の自転車を店の中に入れると、さっそくタイヤから中のチューブを外して水の入った桶にチューブを浸していく。
「あ~、本当にパンクしてんねぇ」
「直せる?」
「セイは時間大丈夫なのか?」
「最悪、8時までなら」
「ははっ。待ってろ、すぐ直すから」
俺は近くにあった椅子に座って待つことにした。
パンクを直しながら、何度も前髪を鬱陶しそうにかき上げている。
整った顔立ちに、綺麗な黒髪は短く切られている。
サラサラな髪が顔にかかるのが鬱陶しいのか、顔をしかめていた。
だいぶ前髪が伸びたようだ。
それでも、どんな髪型でもかっこよく決まるのは顔のせいか。
俺はそんな慎兄ちゃんの横顔を見ていた。
これで凄んだりすることがなければモテるのに、と考えながら。
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