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「そんなに適当に切って、どうやったらあんなに仕上がり綺麗になるかね」
「知らねぇ」
「あといつからそんなに口悪くなっちゃったかなぁ。昔はあんなに可愛かったのにさ」
「不良になったおっさんが、俺の前でも周りによく凄むようになった小学生のころからじゃないか?」
俺は表情を変えることなく答えていると、慎兄ちゃんは静かになった。まだ24、と言い残して。
それから少しして、慎兄ちゃんの頭が揺れだした。
寝るの早すぎだろ、このおっさん。
俺は少し軽く髪を払い落とすと、そっとタオルを取る。
バシンッ!
「いってぇ!」
「おはよう。終わった」
背中を思い切り叩いて起こすと、タオルをはたいて髪を落とす。
それから壁に掛けてある塵取りと箒を取って来て、床に散らばった髪を集めると、ごみ箱に捨てた。
未だ背中を摩る慎兄ちゃんを横目に、塵取りと箒を戻すと、自転車ありがとう、と言って店を出た。
「気を付けて行けよ」
「ん。ちゃんと髪掃えよ」
「おう。ありがとな」
俺は自転車に跨ると、学校を目指して自転車をこいだ。
何だかんだで時間はギリギリの8時。
俺、何であんなに早く家出たんだっけ。
何かを忘れているような気になりながら、まぁいっか、とペダルをこぐスピードを少しだけ速めた。
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