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「華宵ちゃんと、八重ちゃん。これからよろしくな」 茜は、もらった入部届を見て名前を確認してからにっこりと笑った。 「よろしくお願いします、えっと、永瀬先輩と如月堂先輩」 「ええよ、下の名前で。特に如月堂はいいにくいやろ」 カタカタと笑う茜。 けれど名前が言いにくいだろうことは百も承知だ。 俺のほうを窺う2人に、俺は一度頷いた。 「茜先輩と、京星先輩」 「よ、よろしくお願いします」 「ん。よろしく」 俺は紅茶を一口飲んでから、2人に小さく頭を下げた。 茜も満面の笑みで2人に頭を下げていた。 それに恐縮した2人もまた頭を下げる。 放っておけば無限リピートだ。 俺は紅茶を自分から離した場所に置くと、枕にしていた宿題を引き寄せた。 「それって、春休みの宿題ですか?」 「ん」 「お前またサボっとったんか?」 「ん」 堂々とサボった発言すんな、と背中を叩かれる。 だって面倒だったし。 それに提出は新学期最初の授業と書いてある。 それまでに終わらせれば全く問題ない。 宿題なんて面倒なもの、残りの3日で終わらせられるだろう。 「何でもええけど、せめて提出はしいや。冬休みん時みたく出さんのは俺が許さんからな」 腕を組んで言う茜の言葉と同じことを春休み中散々聞いた。 電話を無視していれば、迷惑メールの如く何通もの同じメールが来た。 こういうとこ几帳面というか、律儀というか、真面目というか何というか。
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