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天の川を掴みたくて、また手を伸ばす。
もちろん届かないけれど、なんとなく掴めそうな気がした。
「星って遠いんだね」
「そうだな。……京星、知っているかい? 星は僕たちが住んでいる町にも、昼間でも空にあるんだ」
それはすごく衝撃的な事実だった。
だって昼間に星なんて見えた事がない。夜だってそうだ。ただ濃い暗い紫色が続くだけ。時々数個の星が観られる程度だ。
見えないものは信じない主義の俺には、親父の言葉が信じられなかった。
けれど親父は嘘をつかない。
複雑な心境で、不思議な気持ちで、嘘だぁ! と言った。
「嘘じゃないさ。ただ、昼間は太陽が星よりも明るく光るから、星が見えないんだ」
「じゃあ、夜に見えないのはどうして?」
「町の光が明るすぎるからだよ」
周りが明るいと、星は見えないのか……。
俺は幼心にそう思った。
でも、どうして周りが光れば、自分は光れないのだろう?
「星って、寂しいんだね」
小さな独り言だった。
ぽつりと溢れた独り言は、星の中へと消えていく。
それでも、もっとずっとこの綺麗な星を観ていたいと思った。
自分の瞳に映っているだろう空の輝きを、ずっと自分の中に閉じ込めたいと思った。
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