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何で俺も一緒に行く前提なんだよ。
俺は別に甘いもの嫌いじゃないけど、茜ほど好きでもない。
「京星!」
「ハイハイ」
「和菓子、嫌いですか?」
「嫌いじゃない。……カステラが和菓子ってほんと?」
後ろを歩いて行いていた俺を不安そうに見る松下さんに、俺は気になっていたことを聞いてみる。
松下さんは一気に嬉しそうな顔になる。
「え、カステラって洋菓子ちゃうの?」
「はい。カステラは和菓子です」
松下さんはふんわりとした笑顔で教えてくれた。
昨日から緊張しているような硬い表情しか見ていなかったから、こんな笑顔も出来るのかと思わずクスッと笑ってしまった。
「あ、あの……」
「ごめん。松下さんがちゃんと笑ったの、初めて見たから」
俺は少し恥ずかしくなって顔を背ける。
丁度職員室に着いたのが幸いだった。
部室の鍵を返して下足室に行くと、靴を履き替えて駐輪場に向かった。
まだ3時半の今、始まったばかりの部活動の掛け声やら楽器の音が聞こえてきた。
皆が真剣に部活をしている音だ。
「京星? どないした?」
「どないもしてねぇよ」
俺は茜の言い方を真似て答えると、自転車を出した。
先に待っていた卯月さんたちと合流すると、茜を先頭に自転車に乗って学校を出た。
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