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「食べる?」
「へ?」
「食べたいなら、あげる」
俺はケーキの乗った皿を前に押す。
卯月さんはケーキと俺を交互に見ていた。
「華宵ちゃんだけズルいわ! 俺も!」
卯月さんがケーキを食べる前に、横から伸びてきた腕が俺のケーキを少し持って行った。
俺まだ何も言ってないんだけど……。
俺は仕返しに茜のロールケーキを少し食べた。
大きめのフルーツが甘くて美味しい。
見た目も、キウイやバナナやリンゴ、みかんが入っていてカラフルだ。
それに生クリームも重くない。
「あ、あの……」
「いらなかった?」
「……。い、いただきますっ!」
そう言うと、卯月さんはチーズケーキにフォークを伸ばす。
俺が食べていたのと反対側の、円になっている方を切って食べた。
「美味しいです」
「そ。ならよかった」
相当美味しかったんだろうか。顔が少し赤くなっていた。
「松下さんもいる?」
「い、いえ、私は大丈夫です」
俺は皿を自分の方へ戻すと、残りを食べきった。
フォークを置くと、隣からの視線に気付き顔を上げる。茜がニヤニヤして俺を見ていた。
俺は眉間にしわを寄せてから、すぐに視線をそらして紅茶のカップを持った。
顔を上げて紅茶を飲む。正面に顔を赤くしている卯月さんの顔が見えた。
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