軌跡

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 この日、僕・チョロ松は、にゃーちゃんのライブに早く行くため、朝早く家を出て、始発の電車を駅のホームで待っていた。 「…よかった。やっぱり始発で行ったほうが電車すいてるし、ライブも早めに行くと色々現地で準備できる」  電車が来るには、まだしばらく時間があった。  だからホームには、僕以外に1人、2人ほどしか人がいなかった。  そんな閑散としているホームを見まわしながら、僕は懐かしい思い出を思い出して笑っていた。 「そういや高校のとき、6つ子の中で電車通学だったのが僕と十四松だけで、よく始発で学校に行こうって2人で言って、まだみんな寝てる時間に起きて、こそっと家を出てたなぁ…」 「そうそう。それから、みんなのことを驚かせようって2人でみんなの分のお弁当や朝ごはんも、気付かれないように作るの楽しかったよね!!」 「うん、そうだね…って、えぇ!!じゅ、十四松!?なんでこんな時間に、ここにいるんだよっ!?」  僕が、突然の明るい声に驚いてその声のしたほうを見ると、いつの間にか僕の隣にパーカー姿の十四松が立っていた。 「うーんとね、ボクも電車でおでかけ。今日はね、すっごい久しぶりにね、高校前で松本先生と2人で会う約束してるんだ!!」  そう言う十四松は満面の笑みで、とても嬉しそうだった。 「あぁ、3年間十四松のクラス担任で、社会科担当だったあの松本先生?」 「うん!!ボクって、クラスの同窓会に一度も行ってないでしょ?いつも先生も来てたみたいで、ボクのこと気にして少し前に連絡くれたんだ。…ボクは、いつもクラスでも浮いてた存在だから…」  僕の言葉に最初は元気に返していた十四松だったけれど、途中から俯いて寂しそうにしていた。  そんな十四松を見て、僕は思い出させてしまったことを後悔して申し訳なく思った。 「だから、久しぶりに先生に会えるって思うと、すごく楽しみでしかたないんだ!!」  僕の思いと裏腹に、十四松は笑顔で言った。 「…そっか、楽しんできてね」 「うんっ!!チョロ松兄さんも、ライブ楽しんできてね!!」 「…もちろんっ!!」  笑顔の十四松を見て、安心した僕も笑顔で答えた。  それから、僕らは電車で途中まで一緒に行き、それぞれの下車駅で別れたのだった。  
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