待ち合わせ

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「ハル!」 名前を呼ばれ、私はカメラを顔から離し彼の方を見た。 「久しぶりだね。元気だった?」 「元気よ。あなたは?」 「元気だよ。君に会えてもっと元気になった」 「相変わらずテンション高いわね」 「ハルは相変わらずテンションが低いね」 「当然でしょ。あなたとお別れしなきゃならないんだから・・・」 「首から提げてる、それは何?」 「カメラよ」 「カメラ?」 「あなたを撮りたくて・・・笑って」 「笑えないよ。その、カメラっていうのでハルの顔が見えない」 「私はレンズを通して、あなたがハッキリ見えてるわ。ほら笑って」 「分かったよ」 カシャッ。 「・・・なんだかぎこちない笑顔ね」 「その、カメラっていうのを向けられると、なんか緊張しちゃうんだよ」 「まあ、いいわ」 これで一年、我慢できるだろう・・・。 カメラによってデータ化された彼は、雪と同じ真っ白な髪に青ざめた顔色で、ぎこちなく笑っていた。 「雪が止んで来たわね」 「当然だろ。君が来たんだから・・・」 「私に近寄らないで!」 「そうはいかないよ。分かってるだろ」 「もう少し、一緒にいたい・・・」 「僕もだよ。でも、みんなハルを待ちわびてるんだ・・・カメラどけて、じゃないと君を抱きしめられない」 私は渋々カメラを首から外し肩にかけると、彼が優しく私を抱きしめた。 「やっぱり君は暖かいね」 「あなたは、すごく冷たい・・・」 「また来年会おう」 「うん・・・」 彼の背中に腕を回し私がギュッと抱きしめた途端、 「さよならハル・・・」 私の熱で彼は一瞬で溶け、蒸発した・・・。 彼が消えた途端、降っていた雪は止み、積もっていた雪はみるみるうちに溶けていく。 フユが去りハルが訪れたのだ。 私はさっき撮った彼の写真に別れを告げた。 「さよならフユ・・・」
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