第2話 桶狭間通りの戦い

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「それで、日吉丸……と言ったかの? お前さんは何用でアヅチを訪ねてきたのじゃ?」 アヅチが日吉丸と一緒にトーストを頬張っているので、吉法師が代わりに日吉丸に質問していた。 「もぐ……もぐ……ごくんっ。ええと、正確には拙者が用があるのは、吉法師殿なのです」 「……わしに?」 不思議そうに小首を傾げる吉法師に、日吉丸は居住まいを正して真剣な表情で口を開いた。 「実は、吉法師殿の噂を耳にしまして。大変お強いのだとか……そこでご相談なのですが、吉法師殿にある武将を討ち取って頂きたいのです!」 武将と聞いて、吉法師は眉をひそめて眼を鋭く光らせた。 「その武将とは……何者じゃ?」 「……ヤツの名は『芳菊丸』。ここよりも南東に位置する駿府中学校という学び舎を拠点にしている武将です」 「芳菊丸……聞いたことないのう。それで? 討ち取ってほしいなどと言っていたが、貴様とその芳菊丸はどういった関係なのじゃ?」 日吉丸は少し俯いて顔に影を落としたが、顔を上げて吉法師を見た。 「拙者は元々、芳菊丸に仕えていたのです。……いえ、仕えていたと言っても、拙者などただの雑用でしたが……」 「なるほどのぅ。お主がどのような仕打ちを受けてきたかは察しがついた。しかし、その腹いせにわしらが協力するとでも?」 「……実は近々、芳菊丸が清洲中学校に攻めようとしているのです。利害は一致していると思いますが、如何でしょうか……?」 日吉丸の言葉に、吉法師は眉をひそめた。 トーストを食べ終えたアヅチも、ようやく口を開いて会話に参加し始めた。 「僕からも質問していいかな? ……そもそも、吉法師とかその芳菊丸? っていう『武将』って、一体何なのさ?」 「き、吉法師殿は、何も話していなかったのですか……!?」 「え? あぁ~……コホン。丁度良い機会じゃな! そろそろアヅチにも話してよい頃合いじゃろう!」 (……誤魔化したな) アヅチの冷たい視線を物ともせず、吉法師は説明を始めた。
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