0人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
第2話 桶狭間通りの戦い
「ふぁ~……。おはよう……」
パジャマ姿でリビングに来たアヅチは、大きな欠伸をしたあとに眠そうに目をこすった。
「もう9時じゃぞアヅチ。今朝はまた随分とたるんでおるのぉ。学校とやらはよいのか?」
「今日は日曜日だから学校は休みだよ。母さんも朝から買い物行ってるから、うるさく言われないしね。こういう時にのんびりしなきゃね」
そう言ってアヅチは食パンをトースターにセットして、コップに注いだ牛乳を飲み始めた。
「まったく……。よいかアヅチ。武士たるもの、常日頃から規則正しい生活を心がけてだな……」
吉法師の説教が始まると、家のインターホンが鳴って吉法師の言葉を遮った。
「誰だろう……? はーい、今いきまーす」
邪魔されて少し膨れている吉法師を放っておいて、アヅチは小走りで玄関へ行った。
扉を開けると、ひとりの少年が玄関前で正座して待っていた。
「……え、えっと……、どちら様……?」
「お初にお目にかかります! 拙者、日吉丸と申す者でございます!」
日吉丸と名乗る少年は黄色を基調とした和装をしており、見た目通り明るく元気いっぱいに答えた。
「は、はぁ……。それで、何の用かな?」
「よくぞ聞いてくださいました! 実は折り入ってご相談したいことが……」
「アヅチー、食パンが焼けたようじゃぞー」
リビングから聞こえる吉法師の声で、日吉丸の言葉は遮られた。しかし、日吉丸は気を悪くした様子はなく、むしろ別のことに気を取られていた。
「しょ、食パン……!」
日吉丸はヨダレを垂らしながら、目の前のアヅチだけでなく、リビングにいる吉法師にも聞こえるのではないかというくらい、大きな腹の音を鳴らした。
「……良ければ、中で食べながら話さない?」
「よ、よいのでございますか!?」
日吉丸の物凄い食いつきにアヅチは若干引きつつも、日吉丸を家に招き入れ、リビングまで通した。
最初のコメントを投稿しよう!