『遮光』

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 それは、ある時突然現れた。  一日働いてようやく眠ろうと部屋のライトを消した時。まぶしいライトを見た直後に浮かぶ残光のような形のもやが、左目の上の方に浮かんでいる。ぱちぱち、瞬きする。ごしごし、手で目をこすってみる。目の錯覚ならそれで消えるはずだったのだが、それは相変わらず同じ場所にぼんやり浮かんでいて、高橋が見る方向に合わせて動いた。 ーー見えなくなったのだろうか。  不安になって、部屋のライトをつけてみる。  するとそのもやはすっかり消えて見えなくなってしまった。  きっと疲れ目だ。いつも遅くまでパソコン仕事をしているせいだろう。  すっかり安心して再びライトの電源を切る。と、再びもやが現れ、左目の一部を覆った。  ぱち、ライトをつける。ぱち、ライトを消す。浮かんだり消えたりするもやは薄くも濃くもならず、幾度も繰り返していると得体の知れないものに対する不安感より抱え込んでいた眠気が勝って、高橋はひとまず眠ることにした。  次の日、カーテンを透けて入り込んできた朝日に目覚めると、もやは綺麗さっぱりなくなっていた。  二、三度瞬きをして見え方に問題がないとわかると、高橋はホッと一息ついて意気揚々と出社した。
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