プロット

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 王子様になりたかった女の子、藤原純麗(ふじわらすみれ)14歳、中学二年生。  彼女は小さいころに父親を亡くし、父の代わりに母を守る「王子様」になると決意。  それから髪はいつもショートカット、男の子みたいな服装で、カッコイイ自分になることを楽しんでた。  お母さんが喜んでくれるのも嬉しかったし、そういう自分が好きだった。  でも小学6年生になった頃、そのお母さんも病に倒れ、亡くなってしまう。 「純麗、私のことはもういいから、純麗は自由に生きなさい。普通の女の子になっていいのよ」  そう言われても純麗には、「フツウ」な生き方がどういうものか、もうよくわからなかった。だって男の子みたいでいることが楽しかったから。普通の女の子ってなんだろう?  それから母方の祖父母に引き取られた純麗は、祖父母の「苦労した分、もう普通に生きていいんだよ」という想いを受けて、髪を伸ばし、スカートを履き、勉強に打ち込んで、「おじいちゃんとおばあちゃんを幸せにすること。受験していい学校に行って、いい就職をして、おじいちゃんたちに美味しいものたくさん食べさせてあげること。それが私の夢だ」と思うことにした。でもそれが心からの夢なのか、純麗にはわからなかった。大好きな母を亡くしたショックから少しでも立ち直って前を向くには、新しい目標が必要だったのだ。  そして中学二年生になった純麗は、毎日勉強を頑張りながらも、どこか満たされないような、自分が不自然なことをしているような、焦燥感と苛立ちとでため息が多くなっていた。  クラスの女子はいつもかっこいいアイドルや面白いテレビ、ファッションやメイクの話で持ちきりで、どれも興味がない純麗は適当に相槌を打って曖昧に笑うことしかできなかったし、かといって昔のように男の子に混ざって遊ぶのも違和感があった。男の子ってみんなバカみたいだし、何が面白いのかわからないことで笑っているし、乱暴だし。純麗の心はクラスメイトたちよりも早く大人になろうとしていたのだ。
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