150人が本棚に入れています
本棚に追加
/295ページ
「……伊都子の部屋、久しぶり」
言われてみれば、そうかもしれない。
寮の家に来てもらっても、居間止まりで、自分の部屋まで招き入れるのは何年ぶり、いや十年以上かもしれない。
暮らし向きが豊かではないだけでなく、伊都子には執着心が薄く、あまり物欲も起こらないため、部屋も飾り気がなく、いたって地味だった。
「朔ちゃん。悪いけど、着ているものを脱いで、この浴衣を使って。もうすぐ母が着替えを持って戻ってくるはずだから」
ようやく取り上げることができた自分のタオルを、新しいものに替え、伊都子は背伸びして朔之助に向かい合った。
小柄な伊都子は、朔之助の首あたりまでの背丈しかない。
視線の正面には、朔之助のくつろいだ胸もとがあった。
先ほどテレビで見たコマーシャルの、うつくしい裸体を思い出し、伊都子は俯いた。
最初のコメントを投稿しよう!