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「そうね、そうかも。でも智歌さん、ほんとうは朔ちゃんのことを、とても強い気持ちで……」
伊都子の唇を手で封じ、朔之助は首を横に振る。
「それ以上は、言うな。あいつの気持ちを、ありがたく受け取っておけ」
「……はい」
この夜、伊都子は長く背負っていた櫻井の姓を捨て、晴れて沖原伊都子になった。
つらくても、きっと乗り越えられる。朔之助との絆は、ほんものだから。
朔之助の一生を支えるという、伊都子の夢への第一歩は、はじまったばかりだった。
(了)
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