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幸いにして少年達の目には映っていないが、子供には見せがたいけが人がいてもおかしくないような状況である。二次被害も考えれば近づくのは得策とは言い難かった。
大人しそうな少女――広井(ひろい)ナミはそこまで考えていたわけではないが、事故というよく分からない現象に自分達だけではどうにもならないとは漠然と理解していたのだろう。
だが、それはユウの望む回答ではなかった。
一転して、不機嫌そうな顔つきになったユウはもう一人の少年へと視線を向ける。
「なんだよ! ナミは意気地ねえな……マモルはどうだ?」
「え……ああ……うん」
マモルと呼ばれた少年はどこか落ち着きがない様子だった。ユウのように興奮しているわけでもなく、ナミの態度に近いものだったが、事故を気にしているようではなかった。
一体、何が気になっているのだろうか。
「? どうしたんだよ、マモル?」
「何か変だよ、マモル君?」
そして、それはユウとナミの二人にも伝わっているようであった。
二人に尋ねられたマモル――彩羽(さいば)マモルはこざっぱりした黒髪をかきつつ、二人に問いかけた。
「何か呼ぶ声が聞こえない?」
「呼ぶ声?」
ユウとナミは顔を見合わせるも、さっぱり分からないという顔を浮かべるだけだった。
「えっと、何も聞こえないよ?」
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