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聞こえるのは事故によって発生した音だけだ。少なくとも、二人の耳にはそれしか聞こえていなかった。
「え? ホントに?」
「「ああ(うん)」」
と、二人が頷いたところで、
『――か!!』
叫ぶような、呼びかけるような声が聞こえてきた。
「ほら、また聞こえた」
「いや、何も聞こえねーよ」
「私も聞こえなかったよ」
マモルにだけ聞こえる声、二人に聞こえないのならばやはり気のせいなのかと思うマモルだっ
たが、
『――るか!!』
再び聞こえてきた声に気のせいではないと確信する。
「あーもう我慢できねえ! おれは行かせてもらうぜ!!」
ユウが再度二人に質問しようとしたのもつかの間、ユウが事故を見ようと駆け出してしまった。
「ユウ君!?」
それに気付いたナミが声を上げるも、ユウは止まる気配など微塵もなく、事故現場へとさっさと行ってしまった。
「マモル君どうする?」
ユウを止めるのを諦めたナミはマモルの方を向く。ユウが暴走しがちなのは幼なじみとしてよく知っている。そんなときはマモルと一緒に相談するのがナミのスタンダードだった。
しかし、マモルは話しかけられてもナミの方を向こうとしない。それどころか全然別の方を向いてしまっている。
「……やっぱりだ。やっぱり聞こえる――なんて言っているんだ?」
「マモル君?」
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