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あらすじ  少年は旅をしていた。街から街へ村から村へ国から国へ。 「なぜ、旅をするの?」訪れる場所場所で出会う同い年の少年、少女が尋ねる。 「僕は逃げたいだ、家から国から法律からそして・・・」 いつも少年は同じ問いに同じ答えを返す。 「自分、そして未来から」 後ろ向きな決意の少年だが、彼は場所場所での苦しみながらも前へ進む少年少女の頑張りに手を貸しながら旅を続ける。 少年の名前はアイ。 彼に救われた人たちはそんな彼に自分たちの言葉で彼の心に問いかける。 「逃げたければ逃げれば良いんだよ、納得するまで逃げなさい」 借金のカタで売られそうな女の子を助ける際に法律、経済方面から相談に乗ってくれたおじさんはそう言ってくれた。 「私は逃げた先に何かがあるとは思えない、いつだって戦った先にしかないと信じてきた」 心が張り裂けそうになりながらも自分の夢のために理不尽な日々を過ごし続ける13歳の少女ユメは言った。 誰もが十人十色、そのどれもがアイの答えになるわけはない。 アイは旅を続けるに連れて逃げる旅する意味にすら苦しむようになる。 「結局さ、あなたは格好いいんだよ」 アイはそれでも苦しむ人たちに手を差し伸べ続ける。 そのうちの一人、ユキナからの言葉だった。 「あなたはそんなに自分のことで悩みながらも人の苦しみから目を背けなかった、そして自分なりに助けてきた、それってすごいことじゃない?」 そしてそんな彼を慕ってユキナはいつの間にかアイの旅のパートナーになる。 ユキナが付いて来てくれたところでアイの答えがすぐ出るわけじゃない。 アイはいく先々で自分の無力さに苛まれる。 それでも彼は救おうとし続ける。 彼の能力は必死であること、ただそれだけ。 特に頭がいいわけでも、体が強いわけでも、何かしらの特技があるわけでもない。 ただ、彼は目の前の苦しみに寄り添い、話を聞いて助けられる人の助けを請うだけ。 「僕には何もできないね」 いつだってその苦しみを抱えてきたアイはユキナというパートナーを得たことでその問いを言葉にすることができた。 「うん、そうだね、君は何もできない」 ユキナは飾ることなく、そう言って返す。 「だけど、君は格好いいんだ」 ユキナいつもそうやってにっこり笑ってアイを受け入れる。 その笑みにアイは少しずつ自分のあり方を、自分を受け入れていくことになる。 これは少年が大人になる物語。
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