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野次馬たちのざわめきや撮影の音、クラクションばかりが際立っている。
クレセントの円の中心で、ひときわ大型の個体が降下してくる。これが『領主』となるオーム・デカイト。
オームは他の個体よりもでっぷりして大きい。マスクには角のような意匠がある。
クレセントたちが全員、交差点の中心に降り立つ。オームを守護するかのように円になっている。
その円を、人々が奇異の目で囲む。固唾を飲んだ顔ばかり。
オーム、踵でアスファルトを叩く。と同時に、カッ! と笑顔を作る。白い歯、黒い唇。薄青い口内。
合図で、円のクレセント全員が笑顔になる。ズラリと均質な表情が並ぶ。
アル太とアリナ、クレセントが見える位置に来る。
アル太「飛んでた、よね」
アリナは父の陰に隠れるように。ソフトクリームが溶けかけている。
オーム、喉をさすり、大きく息を吸って、
オーム「人間のみなさん、こ ん に ち は !!!」
空気を震わす大音声。クラクションも止んで、沈黙。
人々は驚いて何も言えない。ドン引き。
アル太の咥えタバコから灰が折れる。
アリナ、アル太の陰で縮こまる。
オーム「ハイ、聞きしに勝る不道徳っぷりですねェ。挨拶には挨拶を、とは習わなかったんですかねェ?」
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