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少女より二つ歳上の、綺麗な金色の髪をした、美しい少年。
少女の幼馴染みだった彼は、何年も前に船に乗って旅立った。
「僕は世界を見て回りたいんだ」
旅立つ前日、少年は言った。強い瞳で海の向こうを見据えながら。
寂しい、と言い出せないで俯く少女に、少年はオルゴールを差し出した。
「帰ってくるまで、預かっててくれないかな」
少女は怖ず怖ずと手を伸ばしてそれを受け取った。
そのオルゴールが、彼にとってとても大切なものだということを、少女は知っていた。そんなものを自分に預けて本当にいいのかと見上げた彼の顔には、とても優しい微笑みがあった。自分はまだ知らない大人の気配に、少女は思わず俯いて、オルゴールをぎゅっと胸に抱き締めた。
少年は「ありがとう」と静かな声で言った。
それ以来少女は、灯台を守りながら彼の帰りをずっと待ち続けている。少年が何かに迷う時、灯台の光と一緒に自分の想いが届くように。いつかあの時と同じ優しい笑顔で、自分の傍に戻ってくることを祈りながら──。
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