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誰にだって、そういう相手のひとりぐらい、居る筈だろう。
数馬にとって、彼がそうだった。
決して負けたくない相手。譲れない相手。
幼い頃から近所に産まれたふたりは勝ったり負けたり、互いに切磋琢磨してきた。いつか雌雄を決する日がくるだろう。
そう信じていた。
だが、その日はこなかった。
数馬の成長が止まったのだ。
最初はまったく気付かなかった。
だが、かつては見下ろしていた相手だった誠一郎が、みるみる数馬の身長を上回り、逆に相手から見下ろされる立場になると、それを否応なく実感せざるを得ない。
数馬の身長は、160センチ。
これからまったく伸びていない。
一方、木下誠一郎の身長は174センチ。
まだ、奴は伸びるだろう。
そんな気配がある。
身長差が広がると、体重差も大きなものとなる。
やがて、道場でも、あいつとはウエートが違うということで、組み手をする機会が消滅した。
闘って、その差を実感したかったが、それは叶わない。
それより気になったのは、誠一郎自身が、闘いを避けている雰囲気が感じられた。
ときおり、奴がこちらを見る眼が気になった。
その眼は、かつてライバルとして覇を競っていた相手に向けるような眼ではなかった。
どことなく哀れむような、悲しい眼をしていた。
やつはますます大きくなるだろう。
格闘技で、身体の大きさというのは武器だ。
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