4人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
動くものが二人しかいない甲板で、二人は肩を寄せ合った。
「手枷、壊さないんですか」
「力は強くなくてね」
「そうですか」
拉げたまだ新しい筈の手枷を見てガーナは苦笑する。
「指が届かないのが悔しいねえ」
その言葉で、どうしてソフィアの拘束具が手枷なのかわかった気がした。
雨は強く降り出し、どんどん雷鳴も近づいている。空を雷が走るのが分かった。立っていられない程に波が高い。
「船、舵は取れるかい」
「まさか」
「あたしもだよ」
「まあ、やり方は分かりますよ。無謀でしょうけどね」
「それでもやるのかい」
「足掻けるのなら、最後まで」
立ち上がろうとするが、船の揺れで思うようにいかない。ソフィアが身体を支えた。
「とりあえず、捕虜になっている人たちを助け出して、協力を頼みましょう。後、服……着てください」
船の中に降りて捕虜だった者たちに事情を説明する。
海賊達の仲間になった事やそのために交換条件を飲んで同じ船の船員を殺めたことは、全員を助けるためのカムフラージュだったと言い逃れた。
納得はされないながらも、多少の暴力や暴言に耐えるだけで一時的な理解が得れたのは助かった。
ソフィアの件は元々自分たちの船を襲った張本人ということで、遺族や亡くなった者たちの友人だったものから反発はあったものの、ソフィア自身の身体に残る目に余る暴行の後と腕の注射痕からの同情も有り、海賊達の被害者だったと印象づけれた分話しをつけるのはスムーズだった。
寧ろ、その恐怖を断ち切って海賊達を一人で倒してくれたと思い込ませるのは簡単だったとも言える。
最初のコメントを投稿しよう!