外伝 死に逝く空の彼方に 第一章 ブロンドの少年

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外伝 死に逝く空の彼方に 第一章 ブロンドの少年

 据えたアスファルトの匂いはどこも同じようなものだ。ひび割れて人の汗やら汚い物が染み込んで元の色が何であったかなんて分かりゃしない。  人も同じようなものだ。薄汚れて横たわって、ヤニの染み込んだ葉でニヤニヤと薄気味悪気に笑う。女は着飾り化粧をして、どれも同じ顔。おっぱいがある分、男よりは見分けがつくかもしれないが、まるで店頭で売られる商品みたいに一様に同じ見た目をしていた。  蓋を開ければきっと、缶詰の中身がツナであったり、焼き鳥であったりするように、違うのかもしれないが……中を覗く気にはなれなかった。 「おっさん、ビール頂戴」  今にも崩れそうに看板の傾いた店頭に俺は手を伸ばす。 「おう、坊主……幾つだ」 「知らね」 「まあいい、飲みな」  渡した金を見て店頭の主人が怪訝な顔をした。俺は財布から、もう一つかみ金を取り出して台に置く。 「何だ坊主、値札も読めねえのか。二ドルだ」 「足りなくはないだろ。隣の街じゃ一ドルだった」 「数も分からないのか」  仕方ないだろう。教えてくれるものなんていないのだから。銀貨が、一つで一ドルのが変えたんだから三つもあれば余裕で足りると思ったのだが違うのだろうか。  俺はもう一枚銀貨を置いた。 「これ以上は出さねえよ」 「毎度」  どうやら買えたらしい。  教えてくれるものがいないと、自分で覚えていかなければいけないから面倒だ。それにしても、財布が随分軽くなってしまった。 「どっかで、仕事探さねえとなあ」  ならず者や浮浪者になるべく目を合わせないようにしながら、俺は雑多を歩いていく。化粧の濃い姉ちゃんたちが若い男を店に呼び込んでいる。俺も行ってみたいが、こういうところに入るとつまみだされたりする。ここに入るには、銀貨なんかじゃなくて財布がパンパンになるくらいの金貨が必要だ。  よし、決めた。  適当に値段が高そうな仕事見つけて今日はこの店に入ろうと心に決める。  治安のいい街では俺みたいな子供は追い出されるが、こういう街なら金さえあれば入らせてもらえる。  本当にいい街だ。  さあ、どこへ行こうかな。  そんな時、頭一つ小さな人影が俺にぶつかった。ように見えた。が、実際には横をすり抜けていっただけだった。  上手いもんだなと関心する。  俺は早足にそれを追いかけて、腕を掴んだ。
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