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船を降りて直ぐ、ソフィアは姿をくらませた。
捕虜にされていた者たちはソフィアの傷が一番重いから治療をうけさせようと躍起になって探していたが見つからなかった。
礼が言いたいと捜索願いを出そうとするものもいた。
ガーナも姿をくらませていたが、それに関しては特に触れるものは居なかった。
「何だい、あたしを説得して捕虜たちに寝返らせたって方が、あんたの利益になっただろうに」
「それだと、貴方への同情は得られても、貴方が今までしてきた事を考えて重罪は免れませんでしたから。
罪を少しでも軽くするには、元々海賊達から逃れようと画策していた貴方が無理やり海賊に引っ張り込まれた私を利用したって方が都合がいいんですよ。
いくら未成年でも、あれだけの事に手を加担していれば流石に死刑は逃れられない。ましてや貴方は壊れた子ども達だ。世間の目は厳しいと思いますよ」
「守ってくれたってわけかい」
「いいえ」
浜辺に打ち上げられたゴミ屑から使えそうなものを引っ張り上げて、加工していく。
「私がただ……そうしたかっただけです。恩に着る必要も、守ってくれたなんて思う必要も無いです」
「立派なもんだね」
出来上がったボートは人が一人、二人乗れればいい簡素なものだった。
「落ちてるものだとこれが限界ですね。
専門的な知識もありませんし……って、何してるんですか」
「折角の出来だから、頂いて行こうと思ってね」
「私が作ったんですが」
「いいんじゃないかい、細かい事は。海賊は奪ってなんぼだよ」
エンジンをふかせ、勝手に船を出そうとするソフィアに嘆息する。
「これからも……あんな事をして暮らしていかれるおつもりなんですか」
「……これしか、しらないからねえ。
まあ、次はもっとましな家族を探すよ。あんたの言うように、守りたい、一緒にいたいと思えるようなやつを家族にしていくのもいいかもしれないしね」
「そうですか」
「なんのつもりだい」
船に飛び乗り、中に座り込むとガーナはソフィアに笑いかけた。
「だったら、私が最初の家族になりますよ。料理くらいは作れますし」
「ふふふ、そうかい。じゃあせめて、あたしを守っても死なないくらいの男にはなりなよ」
「ええ、分かっています」
エンジンの音。風を裂いて船は進む。
「よし、となりゃあまずは船を乗っとるよ。出来れば帆船がいいねえ」
「好きですねえ」
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