第三章 復讐と依頼

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 男達が死んだ後、行き場の無い怒りがどこへ向かうのか。  それは想像に固くなかった。カシューの足は真っ直ぐとまだ無事な壁へと向かっている。 「おい、やめろ」  壁を蹴り砕いていく。一心不乱に振り乱す髪から覗く瞳には何の光も映っていなかった。  カシューを羽交い締めにして壁から引き離す。 「離せ!」 「こいつらと心中する気か」 「お前に、お前に何が分かる。僕は……たった今、母から貰った腕を足を魂を汚したんだ! 最後にこれを、これを始末しなきゃ」  必死に叫び、振りほどこうとするが、足に比べて腕の方は然程力が無いようだった。手錠は悲鳴を上げるものの壊れるには至らない。 「これってのは……お前の事か」 「他に何がある」 「だったら」  俺はカシューの羽交い締めを解き、手錠を壊した。 「俺も壊せよ。共犯だろ」  正直、俺は男達よりもこいつの方にそそられた。足だけで全てを砕くその脚力。 「ただ、ま。壊されてはやらないけど」  俺とどちらが強いのか。  鋭く研ぎすまれた眼光。回転を帯びた蹴りを俺は拳で迎え撃つ。完全な相殺。  ああ、やっぱりこいつは強い。  血が沸き立つのを感じた。 「……終わりぐらい、俺に決めさせろよ」 「あんな奴ら相手に終わらせてもったいねえとおもわねえのかよ」  カシューは地面を蹴った。  しまった。てっきり向かってくると思ったのに、カシューはそのまま壁に飛んだ。  廃墟の壁はもう穴だらけだこれ以上、衝撃があったら。  砕かれる壁、廃墟全体がぐらりと揺れた。壁中を走り回る亀裂。  天井が落ちてくる。  着地した地面でカシューはただ立ち尽くしていた。これで全てが終わったかのように。  俺は、カシューへと手を伸ばして体を抱き込んだ。 「離せ!」 「離すか!」  破片が体に容赦なく降り注ぐ、壊れた天井が背を、頭を強打する。全身が痛い。足が痛いとか言ってる騒ぎじゃない。  だが、俺には耐えられそうだった。 「良かった。盾には、なれそうだな」  音を立てて廃墟は崩れ去った。
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